その質問に海は言わないと答え、はるるんは言うと答えた。
言ったら嫌われちゃうっていう海の意見と、嫌われたとしても相手の事を考えるというはるるんの意見。
好きな人に嫌われたくない。そんな気持ちが私の中に溢れかえっていて、気持ちとしては海の意見と同じ。
自分の事ばかり考えてしまう。
相手の事を考えて大人になった方が良いのかもしれないけど、はるるんみたいにキッパリと言うなんて選択肢を選べない子供の私。
大事にするのは、……自分?それとも相手?
両方って答えたい。
相手の事を思いやる気持ちも大切。でも、自分の事を大事にするのも大切なんだと思う。
この質問にどっちが正解かなんて無いんだと思う。
だから昨日、散々迷ったんだ。
無言で私を真っ直ぐに見つめる梶木君は、今から何を言われるかは分かっていないが、良い事では無い事を空気から察知したのかもしれない。
ついさっきまで真っ赤に染まっていた筈の顔が元に戻っているからきっとそう。
手を伸ばしたら確実に届く距離にいるのに、凄く遠い。
「ねえ、梶木君」
一度は言わないでおこうって思ったんだよ。
でもね。やっぱり駄菓子屋のおばあちゃんの話を聞いてしまったから。
お墓で切なそうに歪む梶木君のお母さんの顔を見てしまったから。
梶木君の亡くなっていたおばあちゃんが昔、私を助けてくれたから。
だからね。
今度は私が梶木君を、梶木君の家族を今の場所から一歩前に進める様に背中を押すよ。


