「知ってる。匂いがでしょ」
ボソッと呟かれたその言葉に思わずふふっと笑ってしまう。
やっぱり梶木君にはそう思われていたか……。
そんな気は、……凄くしてた。
「ううん。匂いも好きだけど、梶木君自身が好き。大好き。付き合いたいって思う位好き」
顔は川へと向けたまま、ハッキリとそう口にする。
心臓は凄いドキドキと大きな音をたてているけれど、顔はそこまで熱くならない。
普通に梶木君への好きな気持ちを告白するだけだったら、こんなにも顔が熱くならない筈がない。
心臓のドキドキだって、きっと梶木君が私の事をどう思っているのかっていう返事が気になってドキドキと音をたてているわけじゃない。
「それって……」
そう梶木君の声で聞こえて来たその言葉を合図に、クルッと顔を梶木君へと向けてじっと目を合わせた。
真っ赤に顔を染めて目を見開いている彼の口からはそれ以上言葉が続かない。
だから、私が先に口を開く。先手必勝っていうやつだ。いや、本当は言い逃げしてしまいたいのかもしれない。
今から言う事で梶木君がどんな反応をするのか、私には見当も付かないから。
「この気持ちは本物だよ。だから、……」
そこで一度言葉を区切るとゴクッと息を呑む。
昨日、本当に凄く悩んだんだよ。
自分じゃなかなか答えが出せなくて、海とはるるんに同じ質問をぶつけてみたんだ。
『大好きな人の知られたくない秘密に気付いてしまって、その秘密を言わないと大好きな人が前に進めないとしたらどうする?』


