「楽しそうだね、森山さん」
隣に足を伸ばして座っている梶木君がふわっと私に微笑みながらそう言うその姿を瞼に焼き付けておきたい。
私は彼のこんな顔をもう見る事は出来ないんだろうか……。
きっと、……今のが最後。
切なくて胸が千切れそうになる心の内を奥底にしまって、ニカッと笑うと口を開く。
「うん。楽しいから」
「あっそ」
いつもながらのどうでもよさそうな返事。
手を後ろにつき、顔を上に向け空を仰ぎ見ている彼を横目で見つめる。
本当に今日は、凄く楽しかった。
梶木君と待ち合わせをして、美味しいパフェを食べて、一緒に歩いた。
手まで繋いで貰って。
目一杯、梶木君を独占した。
この楽しい、幸せな気持ちで今日を終わりたかった。
今ならまだ間に合うって、心の何処で囁き声が聞こえて来たのも本当。
でも、でも、やっぱり私はこの選択をするんだ。
「でも、楽しむのはここまで」
「えっ?」
苦笑してそう必死に喉に詰まっていた言葉を紡ぎ出せば、あからさまに驚いた顔を向けられる。
意味が分からないって顔。
それでも梶木君に説明も無しに自分の話を続け様と口を開く私は、梶木君から見たら変な人だ。
変な人…なんて嫌だけど、多分言葉を紡ぐのを止めたら、もう何も言えない気がするから。
「梶木君。私ね、梶木君の事が好きなんですよ」
一世一代の告白。
それに対しての彼の反応は呆れ顔だ。


