ぽんぽんぼん




それに反応したのか、梶木君がばつが悪そうに空いている手で頭をぽりぽりと掻きながら、唇を尖らせる。



「馬鹿な森山さんが迷子になられて迷惑掛けられるのが嫌だから、……繋いでるだけだから」


「梶木君。……結構無理矢理な理屈だね」


「煩いよ!」



どう考えても人混みを歩いている訳でもないのだから迷子になる可能性は低い。


次いでに言うなら、携帯電話というアイテムを所持している高校生が迷子になったと困る事は凄く少ないと思う。


でも、まあ。それって、私と手を繋ぎたかったって事だと解釈してもいいって事?



隣に並ぶ梶木君を盗み見ると、頬をぷうっと子供みたいに膨らませて不貞腐れているらしいその仕草が何だか可愛い。



「今、梶木君が凄く可愛く見えました!」


「森山さんにそんな事言われるなんて心外なんだけど」



調子に乗った発言だって分かってた。


梶木君がぶすっとした顔をするのだって分かってた。


それでも、こんなに調子に乗った発言すら今日しか言えないかもしれないから。



すっと手を伸ばし、何処に向かいたいのか分からないがゆっくりと歩を進め続ける梶木君の腕を掴むと、ゴクッと息を呑んでから口を開く。



「次はこっち!」



歯を見せて笑ってそれだけを伝えると、腕を引っ張って今日一番の私の目的の場所へと彼を導いて行く。


ビッグパフェ屋さんは、ただ私が梶木君と二人の時間を楽しみたいから選んだ場所。


でも次に向かうのはそんな理由で選んだ場所なんかじゃない。