顔を上げると、真上にある梶木君の困惑気味な顔。
その顔に向かって口を開く。
「お腹のぺこぺこ具合を少しでも減らそうと、梶木君の甘くて美味しい匂いを嗅いでます」
そう断言した瞬間、梶木君の大きな手で彼の胸に埋めていた私の顔をグイッと力一杯離される。
近くで感じていた私の大好きな香りが遠ざかっていく。
「止めて貰える、この変態」
そう言って私の顔を押して来るが、私も負けていられない。
ここで負けたら、お腹が空き過ぎて午後の授業はやっていけないのは間違い無いのだから。
「嫌です!」
「こっちが嫌です!」
必死に抵抗してもう一度梶木君の胸に顔を埋め様とする私と、それを阻止しようと私の顔を押す梶木君。
でも、やっぱり梶木君は男子な訳で、女子の私が彼の力に敵う事はない。
仕方無しに一歩彼から離れると、呆れた顔をしてふぅっと息を吐かれる。
迷惑なのは分かってるよ。
分かってるけど……、
「だってお腹減ってるんだもん。せめて匂いだけでも満たさないと、午後の授業受けれないよー」
唇を尖らせてそう言う私が子供なのも分かっているんだけども、そんな事にかまってられない位、お腹の虫が煩い。
でも、そんな私に向けられる梶木君の目は酷く冷たいものだ。
「そんなの僕の知ったこっちゃない。森山さんが悪い」
正論過ぎる!


