おばあちゃんの話が途切れた所でゴクッと息を呑むと口を開く。
「じゃあ、梶木君が買ってたぽん菓子は……」
亡くなったおばあちゃんが生きていると思い込んで、おばあちゃんの為に買っていた?
そう言葉を繋げたいのに、尻すぼみに小さくなっていく声音ではそこまで言うのがやっとだ。
それでもやっぱり私の聞きたい事が分かったらしいおばあちゃんが私の言葉の続きを拾う。
「泉ちゃんの考えで合ってると思うよ。颯太君は雪ちゃんの為にぽん菓子を買ってるんだよ。それを、雪ちゃんがいつもいた部屋のテーブルの上にお茶と一緒に置くらしい」
「だから、……だから、あの部屋にお茶とぽん菓子が置いてあったんだ」
梶木君の家の和室の部屋に置かれていたお茶とぽん菓子。
あれは、生きていると思い込んでいる梶木君が置いていたんだ。
おばあちゃんが食べやすい様に。
そんなのって、……そんなのって、…悲し過ぎるよ。
「雪ちゃんが亡くなった当初は颯太君が『ばあちゃん、ばあちゃん』って家の中を探し回るんだって理子ちゃんも泣いてたよ」
「理子ちゃんって、……梶木君のお母さん?」
「そうだよ。今でもたまに颯太君が聞くそうだよ。ばあちゃんは、最近出掛ける事が多いね。って」
明るくて元気そうな梶木君のお母さん。
彼女は、息子にそう聞かれる度にどれだけ泣いたんだろうか。
息子に見えない様にひっそりと泣く彼女はどんな気持ちだったんだろう。
そう思うだけでも辛くて悲しくて。皆が皆、切ない思いを胸に秘めているんだ。


