駄菓子屋のおばあちゃんが梶木君が自分のおばあちゃんが既に亡くなっている事に気付いていない事を知ってるって事は予想出来てた。
それでも、……それでもやっぱり目の前でその答えを聞くと、もうどうしたらいいか分からなくなる。
次に何を聞きたかったのかも分からなくなる。
でも流石は『ばあさんっていうのは何でも知っている』って言うだけはある。
何を聞きたかったかすらも分からなくなって呆然としている私に苦笑した顔を向け、私が気になる事を的確に話してくれるのだから。
「まあ、颯太君のは気付いてないというか、記憶をすり替えたと言う方が正しいのかもしれないね」
「すり…替えた?」
「泉ちゃんは、雪ちゃんが亡くなった事故は知ってるかい?」
「う、……うん」
知ってる。といっても新聞記事で読んだだけだが。
「颯太君は本当に雪ちゃんが大好きだったからね。それでいて優しい子だ。だから、自分の代わりに雪ちゃんがはねられたと思ってしまったんだろうね」
「そんな…」
誰も梶木君の代わりになんて言った人なんていないんだろう。
それでも、梶木君はそう思って自分を責めたんだ。
梶木君は優しい人だから。
梶木君はおばあちゃんが大好きだったから。
「だからかね。雪ちゃんがはねられて亡くなったっていう事実を無かった事に記憶をすり替えちゃったんだろうね」
すり替えた……か。


