もう、間違いないと思う。
この駄菓子屋で梶木君と会った時のおばあちゃんと梶木君の会話。
図書館で泣いている時にふと思い出したんだ。
『雪ちゃんは?』
『元気です』
あの時は梶木君が元気だと答えたから、雪ちゃんって人は元気かどうかを聞いたんだと思い込んでた。
でもだ。……駄菓子屋のおばあちゃんは、梶木君のおばあちゃんが元気かどうかなんて聞いて無かったんだとしたら。
もし、あの問い掛けは梶木君のおばあちゃんの事を聞く為にじゃなくて、梶木君本人の様子を伺う問い掛けだったとしたら。
雪ちゃんは、……雪ちゃんの事は思い出したかい?っていう問い掛けだったとしたら。
駄菓子屋のおばあちゃんは……。
「あの、……あのさ。おばあちゃんは、梶木君のおばあちゃん。……雪さんが5年前に亡くなってるのを知ってるの?」
恐る恐る口を開いた私に対して、おばあちゃんはその質問が来るのを分かっていた様に微笑む。
「勿論、知ってるよ。雪ちゃんとは今で言う大親友みたいなもんだったからね」
やっぱり、……おばあちゃんは知っていたんだ。
でも、よく考えたら当然の事だ。
昔から仲の良かった駄菓子屋のおばあちゃんが梶木君のおばあちゃんのお葬式に行っていない筈がない。
「……じゃあ、梶木君が、……雪さんが亡くなっているのに気付いてない事も……」
「知ってるよ」
「…………」
私から視線を外し、眉を下げて切なそうな声音でそう答えるおばあちゃん。
それに口を開けるが声が出ない。


