店に足を踏み入れると、スタスタと早足で土間を通り越し畳みの前で足を止める。
人が来た気配を感じ取ったのか新しく入荷したお菓子をゆっくりと陳列していたおばあちゃんが私の方へと顔を向けた。
「おや、泉ちゃん。ぽん菓子かい?」
「ううん。違うの」
そう言いながら首を横に振ると、おばあちゃんが不思議そうに首を傾げる。
「泉ちゃんがぽん菓子以外の物なんて珍しいね」
「ううん。今日はおばあちゃんに聞きたい事があって来たの」
私の目をじっと見つめるおばあちゃんは、何も言わなくても全てを分かっている様な気さえしてくる。
ゴクッと息を呑んだと同時に頭に響く心臓が早鐘を打つ音。
凄く緊張しているんだと思う。
今から聞こうとしている事を口に出す事を。
そんな私の気持ちすら見透かした様に、
「ほーお。そうかい。そこにお座りなさいな」
緩い口調で畳の上をぽんぽんと軽く叩いて私をその場へと促す。
「うん。ありがとう」
おばあちゃんに促されるままに靴を脱いで畳へと上がると、腰を下ろした。
私との距離を1メートル程開けて座るおばあちゃんは、多分人との距離感を凄く分かっている人なんだろう。
今の私はべったり隣に来られても、離れ過ぎていても話を切り出しにくくなると思う。
この距離感が丁度良い。


