お墓の前まで来てみてから、今やって来た道へと視線を向ければ、終わりが見えないずっと下へと続く長い道に見える。


墓場が山にあるのだから、自然と上に登る事になるのは当然なのだが、毎回この道のりはキツい。



「よしっ!綺麗にするぞ!」



お父さんのその声を合図に墓石に持ってきた水を掛け始めるお父さんとお祖父ちゃん。


お母さんは、墓前の前に置かれている花立に入っていた枯れてしまっている花を取り出している。


その枯れた花をごみ袋に入れながらお母さんが私と海へと顔を向けた。



「泉と海はお墓の周りの草とか抜いて」


「はいはーい」



返事をして腰を下ろし雑草へと手を伸ばす私とは打って変わって、海は眉間に皺を寄せて不満顔。



「うわっ!ネイル剥げるー」


「文句言わないの!」


「はーい」



お母さんに一喝されれば、流石の海も渋々腰を下ろしたらしい。


鶴の一声ってやつだ。


お墓の周りの草も綺麗に抜き終わると同時に墓石も磨き終わったのか、お父さんが両手を上に挙げてグーッと伸びをしている。


スッキリしたお墓周りにピカピカと太陽の光を浴びて輝く墓石。


綺麗に咲き誇る花立に挿された仏花。


何だかお祖母ちゃんが笑っている気がする。お祖母ちゃんだけじゃなくて、ご先祖様も。


グイッと額から流れる汗を手の甲で拭うと、履いているショートパンツのポケットから数珠を取り出した。


皆もそれぞれ数珠を取り出してお墓の前に立っている。