「好きだけど、何か文句でも言うつもり?森山さんにそんな事言われるとかもう生きていけなくなりそうだよ」
「そこまでっ!」
「当然だよね」
片方の口角をわざとらしく上げてそう言ってくる梶木君は怖い。いや、酷い。
ふわふわと幸せになる香りは健在なのに、背筋がゾゾッと寒くなる。
ハハッとから笑いをしてその場を凌ぐのがやっとだ。
そんな嫌な空気も少しだけで、少し進めばもう購買が目に入ってきた。
多くの生徒でごった返している購買は、既に購買のオバチャンすら見えない状況だ。
思わず眉間に皺が寄る。
「うわー、混んでるね」
そんな私とは違い動じる事なく平然としている梶木君はこの状況に慣れているのだろう。
そういえば、梶木君はいつも購買でパンかおにぎりを買っていたっけ。
「いつもこんな感じだけど」
「そうなんだ」
ほらやっぱり。彼にとっては当たり前の光景なんだ。
「あっ、先にお金出しとこっと」
その方が早く買える!
そう思って財布を開けて中を覗く。
「あれ?」
財布の中を見た瞬間漏れ出た声。
それに続く絶望感。
これって……
「ああぁぁぁぁぁぁあ!!」
大絶叫をあげる私に多くの冷たい視線が向けられる。
勿論、隣にいる梶木君も冷たい視線を私に向けるその一人だ。
「何?森山さん煩いよ」
そう、煩い。
でも、叫んでしまう程の事か起こったのだよ。人の目など気にならない位の……。


