「うん。ではでは4日後に!」



物分かりの良い女の台詞。


うん。我ながら大人な私万歳!



そうやって自分を心の中で誉め称えてみたが、どうやら大人な私は口だけだったらしい。



「なっ、……何してんの、森山さん?」



若干引き気味の梶木君の声音が頭上へと降り注ぐ。


それもその筈。


なんせ私の身体が梶木君の胸へと抱き着いているんだから。


口では物分かりの良い答えを返しているのに、身体は正直だったらしく、気付いたら梶木君へと抱き着いていた訳だ。


自然にってやつだと思う。


抱き着いているんだから、今更言い訳なんてしたって遅過ぎるのも承知済み。


顔だけを上に向けて苦笑いを漏らす。



「少しだけ匂い補給です」



それに対しての梶木君の呆れ顔と盛大な溜め息。それとキツーイ一言。



「少しだけ……だからね」


「えっ!?」



きっとまたウザいとか、鬱陶しいとか言われるんだろうな。なんて思ってたのに。


いつもと違う。


っていうか、……まさかのお許し!



「何?」



不満でもあるわけって続きそうな顔を向けられるけど、不満なんてあるわけない。



「ううん。ありがとう!」


「別に」



その言葉を聞いた所で梶木君の胸に顔を埋めて思いきりスーッと息を吸い込む。


梶木君の甘い香りが鼻を通って身体の隅々まで行き渡った気がする。