それにしてもだ、梶木君は焼きそばパンが買いに来る人が増えると嫌って事だよね。
それって、
「もしや、梶木君は焼きそばパンを?」
「そうだね。森山さんが焼きそばパンなんて言ったら、この場所にくくりつけておく所だったよ」
「酷っ!」
そして、怖っ!
焼きそばパンって言ってたら、私はこの辺にある柱にでもくくりつけられていたのか。
梶木君、……地味に怖いよ。
「敵は少しでも減らしたいからね」
「私は敵ですか!?」
「焼きそばパンを狙うなら敵だよ」
淡々と話しているが、目は真剣だ。
梶木君は本気だ。本気で焼きそばパンを狙う人を敵だと認識している。
そこまで焼きそばパンにご執心ですか、梶木君!
思わずそう突っ込みたくなってしまったが、深呼吸をしてその言葉を喉の奥へと戻していく。
こんな本気の梶木君にそんな事を言ったら、その後めちゃくちゃ貶されるのは目に見えているのだから。
いや、まあ、でも、
「コロッケパンで良かったぁ」
「本当にね」
ほっとして出たその言葉にさらっとそう言ってのける梶木君。
そんな梶木君が何だか可愛く見えて、クスクスと笑い声を漏らしてしまった。
「梶木君、本当に焼きそばパン好きなんだね」
ハッと気付いた時には既にそう口から言葉が出ていて、梶木君からの睨む様な視線が突き刺さる。
あんなに貶されない様にと頑張っていたのにあっさり失敗してしまっている。
完全に時既に遅しだ。


