「哀れ」
「いや、もういいよ」
海からの可哀想なものを見る目を浴びてガックリと肩を落とす。
が、へこんでいる私なんて気にしないで我が道を行くのはお父さんだ。
グーッと両手を上げ伸びをすると、
「さあ、我が家に帰るか!」
その言葉を合図にぞろぞろと全員が病室から出て行く。
何があってもお父さんの決定は絶対なんだ。というよりは、そうしてあげないといい歳なのに拗ねるという鬱陶しさを発揮する訳だ。
面倒臭いお父さんなのだ。それを皆、分かってる。
皆に続いて最後に病室を出ると、ドアを閉めた。
真っ白なドアに真っ白な廊下。それに加えて真っ白な壁。
病院を少し息苦しい閉鎖空間に思ってしまうのは、全てが白で統一されているからかもしれない。
正直に言ってしまえば居心地の良い場所…ではないかな。
ドアに視線を向けながらそんな事を思って一人苦笑している間に、皆はスタスタと先に歩いて行ってしまっている。
慌てて後を追いかけようと身体を動かした瞬間、チラッとだけ視界に入った人影に思わず声を上げた。
「えっ!?」
その気になる人影は、家族の皆が進んでいる方とは逆へと歩を進めて行く。
「どうしたのお姉ちゃん?」
足を止めたまま一向にやって来ない私を不振に思ったのか、背中に海の声が掛かる。
でも、今は海の方を振り向くなんて事出来そうもない。
だって、私の目は私の今いる所から少し離れた所を歩いている人の後ろ姿に釘付けなんだから。


