予想外なその言葉に思わず頬が緩む。
「今日は購買でパンでも買おうかと」
へらっと笑ってそう答える私の声は少しだけ高くなっている気がする。
私の事を梶木君が知っていてくれた事が、たったお昼のお弁当の事だけにしても嬉しかったんだ。
だって私、梶木君に嫌われてると思ってたから。
いや、知ってたからって嫌われて無いとは言えないか……。
匂いを嗅いでくる女なんて、好きにはなれないよね。うん。私も逆の立場だったら絶対になれん!
でも嗅ぎたくなっちゃうんだなぁ、これが。
好きになってとは言わないけど、嫌われたくは無い…かな。
一人でそんな事を考えていると梶木君が私に顔を向けて口を開いた。
「へえ、何パン?」
購買で何パンを買おうと思っているかというその問い掛け。
そりゃ勿論、
「お腹減ってるから、コロッケパン!」
購買のコロッケパンはボリュームたっぷりで一個食べるだけでお腹一杯になる優れものだ。
「あー、コロッケパンね。良かった」
「ん?何で良かった?」
私がコロッケパンを欲しがる事が良かったの?
首を傾げる私をフッと鼻で笑う梶木君。
人を小馬鹿にしたその笑いを私は一日で一体何回聞くんだろうか。
「そんなの、焼きそばパンを買いに来る人が増えないからに決まってるでしょ」
そこで言葉は終わったが、明らかに梶木君の顔はその後に、森山さんって、馬鹿。と続きそうな顔をしている。


