机の横に掛けてある鞄から財布を取り出すと席を立った。
「じゃあ、ちょっくら行ってきまーす!」
はるるんに向かってひらひらと手を振ると私同様に手を振りながらの「いってらっさーい」がやってくる。
その後に続いた
「あっ、先に食べとくよ!」
に、歩を進めながらにこっと笑って頷いた。
廊下に出て購買に向かって歩いていると、目の前に私と同じく購買へと向かって歩いているであろう見知った後ろ姿が見える。
あの後ろ姿は間違いない。
梶木君だ!
「梶木くーん!」
そう叫びながら駆け寄ると、彼の背中をぽんっと叩く。
顰めっ面をして振り返る彼は、声だけで私だと分かったのだろう。
「何、森山さん?」
「まあまあ、そんなに嫌な顔しないで下さいな。購買ですか?」
梶木君の隣に並ぶと首を傾げる。
この時間にこの道を歩いているという事は十中八九購買に行く人だと分かるのだか、そう聞くのは彼の隣に並びたかったから。
彼の隣に並ぶだけでふわっとやってくるこの香りを嗅ぎたかったから。
ぶっきらぼうに「そうだけど」と返事をする梶木君も、きっとそんな私の考えなんて分かっているんだと思う。
「私も購買!」
手に持っている財布を梶木君に見える様にするとにこっと歯を見せる。
が、そこで梶木君が首を傾げた。
「森山さんはいつもお弁当じゃなかった?」
あっ、知っててくれたんだ、梶木君。
私がいつもお弁当食べてるって。


