「あ、あああの。私、梶木君と同じクラスの森山泉と言いまして。その…、梶木君の…、お見舞いに……」
思い切り吃ってしまった!
この醜態、……恥ずかし過ぎる。
今の状態を苦笑いで何とか誤魔化そうとしてみるが、そんな事は必要無かったらしい。
私に向けてふわっと微笑む彼女は、大人だ。
大人の対応が返ってくるのは当たり前で。
「あら。颯太のお見舞いに来てくれたの?」
「は、はい」
その言葉にブンブンと首を縦に振る。
「ありがとうね!颯太も喜ぶわぁ。彼女さんが来てくれたんだから」
「ん?」
彼女さんとな?……私が?
「それにしても、颯太にこーんなに可愛い彼女がいたなんて知らなかったわぁ」
勘違いされてるっ!
「か、彼女なんて滅相もございません!」
目を見開いて思い切り首を横に振るが、彼女はへらっと笑うだけ。
「またまたー。良いのよ、誤魔化さなくて」
「いや、誤魔化してませんが……」
そう言う私の言葉なんて聞こえていないのか、それとも耳に入った瞬間抜け出ているのか、にこにこ笑って口を開く。
「ごめんねぇ。本当はお茶とか出してあげたい所なんだけど。私、急に仕事に呼び出されちゃって」
彼女話をすっかり終わらせて別の話題へと持っていかれてしまっては、もう本当の事を言う事も出来ない。
というか、言っても信じなさそうな雰囲気がプンプンしているけど。


