「な、何で!?」
「自分の分に手を掛けるのが楽しいのよ。泉の分まで作ってたら、私の分が手抜きになるでしょうが」
「お、おう。なるほど」
自分のお弁当に全力を尽くしているはるるんは、毎朝それだけ時間を掛けて作ってるって事だ。
そりゃ、はるるんの作った豪華絢爛なお弁当を食べてみたい。
けど、はるるんの貴重な時間を割かすのも悪いしなぁ……。
とまあ、色々と考えてしまう。
「それに、折角作ってくれてる泉のお母さんに失礼でしょ」
机に頬杖をつきながら、私に向かってそう言うはるるん。
まさか、
「そこまで考えて!」
凄いよ!私のお母さんの事とかまで気が回るとか。
「当たり前よ」
ふんっと鼻を鳴らす彼女が、私より遥かに大人に見える。
「流石はるるん!」
「もっと敬ってよくってよ」
「敬う、敬う!」
二人でけらけらと笑い合うこの時間が好き。そう思えるのもはるるんが一緒にいてくれるからなんだろう。
「で、泉のお弁当は?」
どうやらはるるんは、私の目の前にいつもなら出されるお弁当が置かれていない事に気付いたらしい。
わざと出していないとかでは無い。
はあっと溜め息を吐くと、それがさと言葉を続けた。
「今日はお母さん寝坊だったんだよね。だから、購買で宜しくってさ」
「まあ、そういう事もあるわね。購買なら早く行かないと食べたいの無くなるわよ」
ふふっと上品な笑いを漏らす彼女に「だね」と相槌を打つ。
確かにお母さんだってサイボーグじゃないし、こんな日もあるってもんだ。


