「あの…ちょっと今回の取材にあたって自分的に疑問に思った事があるんですけどっ」
「なんですの?」
と彼女は不思議そうな顔をした。
「失礼だったらすみません…なぜ撮影はダメなんですか?坂巻さんアイドルみたいに細くて綺麗なのに…。」
「だって私、アイドルじゃないですから。」
彼女は、はっきりした口調で語りだした。
「私みたいに主にアニメ・ゲームの仕事を中心としてる場合は特にメインは自分ではなくキャラクターでしょ?声優とはキャラクターに声という命を吹き込んでるの。私が喋ってるのではなくてキャラクターが喋ってるの。だから声優がイベント以外の場で顔を出したりするのはおかしい。子供に夢を与える仕事なのにそれを壊すことになるわ。」
「確かにそうですよね。」
これしか言葉が浮かばなかった。ネットとかでみる限りアイドル声優のド真ん中に居るような人だと思っていたから余計こんな声優という仕事に責任と自覚を思ってるなんて…。
あたしは彼女の嘘のない言葉とまっすぐに澄んだ目に心がゆれた感じだった。