遠野さんが行ってしまったのを
見計らって、あたしたちは中庭へと
場所を移した。
自動販売機の横のベンチに、鷺原さんは
さっさと腰掛けると、あたしにも
座るよう促した。
「あなたが一年の、瀬戸直子さん?」
俯いているあたしに、鷺原さんが優しい
声で聞いた。
あたしは顔をあげて「はい。」と
小さく返事をした。
「大体のことは、涼から聞いちゃった。
ごめんなさいね。」
ごめんなさい。
鷺原さんは、
少しも悪びれずに言った。
それでも何のわだかまりもなさそうな
声に、あたしは思わず鷺原さんを、見つめる。
「…怒ってないんですか?」
「あの張り紙のこと?怒ってるわよー。
男に媚びを売る性格の悪い女だっけ?
ひっどいじゃない!」
鷺原さんが、びしっとあたしを指差して
いうので、あたしは恐縮して肩を
すぼませる。
「ごめんなさい…。」
もう一度、謝る。
ふ、と鷺原さんが息をもらして微笑んだ。
「涼が好きなの?」
直球で尋ねられて、返答につまる。
うろたえるあたしを、鷺原さんが優しく見つめる。
あたしはそれだけで
あぁ、かなわない
そう、思った。
ひどいことをした相手をこんな風に
見つめるなんて。
あたしにはできない。
それとも三年生になれば
こんな風になれるのかな。
見計らって、あたしたちは中庭へと
場所を移した。
自動販売機の横のベンチに、鷺原さんは
さっさと腰掛けると、あたしにも
座るよう促した。
「あなたが一年の、瀬戸直子さん?」
俯いているあたしに、鷺原さんが優しい
声で聞いた。
あたしは顔をあげて「はい。」と
小さく返事をした。
「大体のことは、涼から聞いちゃった。
ごめんなさいね。」
ごめんなさい。
鷺原さんは、
少しも悪びれずに言った。
それでも何のわだかまりもなさそうな
声に、あたしは思わず鷺原さんを、見つめる。
「…怒ってないんですか?」
「あの張り紙のこと?怒ってるわよー。
男に媚びを売る性格の悪い女だっけ?
ひっどいじゃない!」
鷺原さんが、びしっとあたしを指差して
いうので、あたしは恐縮して肩を
すぼませる。
「ごめんなさい…。」
もう一度、謝る。
ふ、と鷺原さんが息をもらして微笑んだ。
「涼が好きなの?」
直球で尋ねられて、返答につまる。
うろたえるあたしを、鷺原さんが優しく見つめる。
あたしはそれだけで
あぁ、かなわない
そう、思った。
ひどいことをした相手をこんな風に
見つめるなんて。
あたしにはできない。
それとも三年生になれば
こんな風になれるのかな。

