「平野!そこはパスだろ!」
「いや、そこは俺一人でも大丈夫っすよ!」
「何生意気なこと言ってんじゃ、お前はぁ!!」
「げほっ!」
3on3のミニゲーム形式での練習中、キャプテンの小谷先輩が俺の背中に飛び蹴りをお見舞いした。
「中学のチームと今のチームのやり方は違うんだよ!!わかったか!!」
「わかったっすよ…」
蹴られた背中をさすり、練習を再開する。
「またキャプテンに怒られたね」
休憩中、そう言いながらドリンクを渡してきたのは、同じクラスのバスケ部マネージャーの塩野梨華さんだ。
京斉(きょうさい)高校に入学して大分日がたった。
推薦入学した俺は、すぐにバスケ部に入り、レギュラーの座を獲得した。
「うっせ。俺も努力してんだよ」
「ホント、一人でプレーしてるよね」
すとんっと隣に腰を下ろし、塩野さんは俺に目線を合わせてくる。
「塩野さんは、バスケ知ってるのか?」
「そんなに。だって、あたし小谷キャプテンに一目惚れしてマネージャーになったんだから」
「そーだったな」
「あとさ、さん付けやめてよ」
「あー、ごめん」
受け取ったドリンクを飲んで、軽くストレッチをする。
「おい。今年の凛海、ヤバいやつ入ったぞ」
部室にタオルを取りに行っていた森田先輩が、全国注目学校、選手特集!と表紙にでかでかと載っているバスケ雑誌を持って体育館に現れた。
