空、海


「ほら、電気消すよ?」
「うっせーな。今出るよ」
速水くんは自分の荷物を持って体育館を出る。
私はそんな速水くんを見て若干苦笑しながら、体育館の電気を消す。

「速水くんは電車?」
「いや、チャリ」
「じゃぁ違うね。私は電車」
「知らねぇよ」
速水くんははぁっと息を吐く。私はくすくすと笑いながら、隣に並んで通用門まで歩く。

「じゃぁね。速水くん、明日朝練あるから」
「…わかってるよ。あのさ」 
「ん?」
「その、くん付けやめてくんね?なんか、気持ち悪い」
「わかった。んじゃ、速水も私のこと、お前呼びやめてね」
「は?だって俺、お前の名前覚えてねーし」
「あのさ、この前の自己紹介はなんのため?まぁ、いいや。寺山空。寺山でいいよ」
「ん、寺山だな。わかった」
速水くんはそう言って頷く。そして、自転車置き場に向かって歩き出した。 

「じゃぁね、速水」
「ん」
ひらひらと手を降って、速水は遠ざかって行った。
私は、しばらく速水の後ろ姿をぼんやり見つめて、駅に向かって歩き出した。