「だから、海はボールばかり見すぎなの!もっと相手を見て」
「だってよ、難しいんだぜ!なんで空はできるんだよ!」
「私は海よりバスケやってるもん。ほら、もう一回!」
海がバスケを始めて、それから二人は放課後近くの公園でバスケをしてから帰るのが日課になっていた。
初心者の海を、空が教え、それだけで時間が過ぎて行く。
そして、最後に二人で1on 1をして帰る。
進級しても、二人はいつも通りバスケをしてから帰る。
海も段々慣れていき、空にいつも勝負を挑んでいる。
「空、今日こそ勝つ!」
「もー、三回までね」
中学に入学してからも、二人はバスケを続けた。二人が通う中学はバスケ部が強く、レギュラーになるには相当な努力が必要だった。
しかし、空は一年生の夏、レギュラーの座を獲得した。
「空、お前すげぇな」
「海に負けないように、毎日練習したもんね」
「俺だって、毎日お前に勝てるように練習してるっつーの」
「んじゃ、私はその倍」
「俺はその倍の倍」
「私はその倍の倍の倍」
海は、空に少しでも追い付くようにがむしゃらに練習した。
そして、ついに一年生の冬に海はレギュラーの座を獲得した。
「おめでとう、海」
「サンキュー、つか、もうすぐ全国大会だな」
「男子と女子、どっちも優勝が目標だもんね、頑張らないと」
「わーってるよ」
「私、絶対優勝したい。男子と女子両方とも優勝したらさ、海と一緒に戦った事になるじゃん。だから」
「俺も同じだっつーの。もぅ一緒に試合することはできねーけど、優勝したら、一緒に試合したことになるよな」
「ん、じゃぁ約束。」
「あ?」
「バスケは、一人でやるものじゃないでしょ?だから、仲間を信じて、みんなで優勝するって約束して」
空は小指出して、にこりと笑った。
海も、満面の笑みで空の小指に自分の小指を絡めた。
「当たり前だろ?約束な」
