夜のストバス場で、ドリブルの音が響く。

私はベンチに座り、携帯を片手に握りしめて速水の自主練をボーッと監視する。

ついさっき、栗田先輩から速水の自主練を監視するようにとメールが送られ、私はこうして速水を監視するはめになった。

「お前、かえんねーの?」
「速水が帰ったら帰るよ」

速水がシュートを決めるたびにこの会話の繰り返し。
速水はボールを持って、ベンチに向かって歩く。私は速水のバックからスポドリを取り出して投げた。

「あり、もーねぇわ」
「ごみはちゃんと捨てなよ」
「わーってるよ、お、ごみ箱あんじゃん」

速水はストバス場の隅に置いているごみ箱を見つけると、ペットボトルをごみ箱めがけてシュートした。

「あ…」

この光景、知ってる。
海と、最後に一緒にバスケした後、二人でごみ箱めがけて…

速水が投げたペットボトルは、ごみ箱に入らず地面に転がる。それを見た私は、ぷっと声を出して笑いだした。

「っ、そんな笑うことねーじゃん」
「違うの…、ふはっ…!ちょっと思い出して…」
「落ち着けよ、お前」
「ふぅ…、ん…」

私は呼吸を元に戻し、転がったペットボトルを拾う。そして、速水が投げた場所よりすこし離れた場所で、ペットボトルを投げる。

ペットボトルは、ちゃんとごみ箱の中へ吸い込まれた。