空side

地獄の合宿が終わり、もうすぐ始まる全国大会に向けて、凜海高校バスケ部は厳しい練習に精を出していた。

「おい、寺山。速水は?」
「あ…、補習です」
「あのばか…」

栗田先輩は盛大にため息を吐き、私は心の中で先輩に同情した。
練習が始まって一時間ほど経過したころ、補習から帰ってきた速水が体育館に顔を出した。

「ばっか、おせーよ!速水!」
「すいません!今からアップするんで!」

速水は栗田先輩に頭を下げて、慌てて外周を走りにいく。
速水が走りにいくのを見送った栗田先輩は、くるりと私の方を向く。

「寺山、あいつの監視頼むわ」
「え、なんで私…」
「マネージャーだろ?」

にこりと笑う先輩に逆らえずに、私はため息をつきたいのを我慢して、速水の後を追った。