海side

「大丈夫か?平野ー」

「あ、すいません、大丈夫でー」
「全然大丈夫じゃないです!」

医務室から帰ってきた俺に、小谷先輩が声を掛ける。
俺が答えようとしたところに、すかさず空が小谷先輩に答える。

「空!俺は大丈夫だって!」
「海が大丈夫でも、駄目!小谷主将、海はこの合宿期間残り二日、絶対安静をおすすめします」
「空!」
「そーだな。全国で怪我で出れねぇってなったら困るしな」
「小谷先輩!」
「二日ぐらいバスケしなくても死なねぇよ」

俺が小谷先輩に抗議しようと口を開くと、速水が途中から入ってくる。
そして、空の隣に立つ。

「ちげぇよ、俺は、全国で優勝したくて…!」
「怪我して出られなくなったら、優勝も元もねーだろ」
「…!」

速水の正論に俺は何も言う返せなくなる。
ぐっと唇を噛んで、速水を睨む。

「ったく、お前はどんだけ先輩を頼ってねーんだ」
「って」
「ちょっとは俺らを頼れ!」
「小谷先輩…!かっこいいです!」

塩野が顔を覆ってなにか言っていたけど、それは見なかったことにして、
叩かれた頭を押さえ、頷く。

「寺山ー、速水ー、ちょっと来てくれー」

「はい!」

空と速水は凜海の先輩に呼ばれてそちらに向かう。

「サンキュな」

俺は空の後ろ姿に、小さくお礼を言った。