海の昔より低くなった声が、鼓膜に響く。
海の顔を見れば、至近距離に、幼さを少し残した海の整った顔があった。

「海…?」
「空、俺は別に無理してない。それに、俺バスケ好きだし」

海はそう言って、ぎゅっと私を抱き締めてきた。
小さい頃、よく二人で抱きついて遊んだりしてたけど、それとは違う。

海は優しく私を抱き締め、そのまま動かなくなった。

「ちょ、海…!」
「ごめん、もう少し、このままがいい」
「っ…」

海が囁くように私に言う。
そんな、寂しそうな声で、そんな事言わないでよ。
どうして、そんなに悲しそうな顔するの?

海、いつもの、いつもの笑顔はどこに行ったの?

海の背中に腕を回そうとする。
けど、できなかった。

昔みたいに、海を抱き締める事ができなかった。

「空」

海が私の名前を呼ぶ。
私はただ、私を抱き締める海の体温を、感じていただけだった。