空、海



「ひどい目にあった…」

すっかり日が沈んだ頃、俺はぐったりと地面に倒れ込んだ。
時計を見て、すでに練習が終わって自由時間の頃だとボンヤリ考える。

「歩くか」

合宿所から一人、のんびり歩く。
もう夏だと言うのに、夜風が気持ちいい。

「ん?…海の匂い…」

夜風と共に、潮の匂いが鼻をつつく。
耳をすますと、波の音も微かに聞こえた。
自然と歩みが早くなり、気がつけば走っていた。

「やっぱり…!」

目の前には、やっぱり海があった。
誰もいない砂浜に、裸足で歩く。

しばらく一人で海を眺めていると、誰かが来る気配がした。

振り向くと、そこには、ボールを持った速水がいた。

「平野…!?」
「速水」
「お前、なんでここに」
「別に、走り終わって散歩してたら、ここに来ただけ」
「じじいかよ」
「うっせ」

速水の顔から視線を外し、ボールに視線を向ける。速水はそんな俺に気づいたのか、ボールを器用に指先で回し始めた。

「この近くにストバスがあるらしいからよ、来てみたら海があったから見に来ただけだ」
「んじゃ、ちょっとやっていかね?」
「別に」
「決まり。行くぞ」