海side

「平野、あの人が幼馴染みの子?」

帰りのバスの中、塩野がそう聞いてきた。

「そーだけど?」
「すごい美人じゃん!平野の幼馴染みが美人とか、あり得ない!」
「どーゆー意味だよ!」

塩野の頭を軽く小突くと、塩野は頭を押さえて俺を睨んできた。

「でも、なんかもっと親しいのかなって思ってたけど…、なんかけっこう違うんだね」
「ん…、まぁ、色々あってさ」
塩野の顔を見ずに、俺は答える。
こいつ、変なところに気づきやがるな…。

「お腹減ったなぁー。平野、帰りコンビニでなんか買おうよ」
「ん、そーだな。でもよ、寮に帰ったらすぐ夕飯じゃね?」
「そんな食べないよ」
「太るぞ」
「うっさい」

横腹に痛みが走る。塩野が肘で俺の横腹を殴ったみたいだ。
けっこう痛い。

「平野、なんか奢ってよ」
「はぁ?なんでだよ」
「なんでも」

塩野はそう言って笑う。
あ、今の、どこか空に似てるな…。

「平野?やっぱ痛かった?」
「心配するなら最初から殴るな」

そう言って睨むと、塩野は笑いながら謝ってくる。

「塩野、なんか食いたいもんある?」
「え?まぁ…」
「ん、奢ってやる」
「え!?冗談だったんだけど!」
「なんだ、いらねぇの?」
「いる!」

はいっ!と何故か手をあげて即答する塩野を見て笑うと、丁度バスが停車する。

近くのコンビニに嬉しそうに入っていく塩野を見て、俺ものんびりその後に続いた。