「お前、久しぶりに会った幼馴染みにあんな感じでいいのかよ」

帰りの電車のなか、ずっと黙っていた速水が口を開いた。

「…わからない。でも、もう海の事困らせたくないってゆうか、無理してほしくないってゆうか…」
「なんだよ、それ」
「わからないって言ったじゃん」
「逆ギレすんなよ」
「してないっ」

私が強く言い返すと、電車がガタン!と大きく揺れた。
私はバランスを崩して倒れそうになったところを、速水が慌てて私の腕を引いて自分の方へ引き寄せた。

「大丈夫かよ、キレるから電車が揺れたんじゃね?」

すぐ近くに速水の顔があって、耳元で声がする。

すごく心臓が五月蝿く鳴って、顔が熱い。
男子がこんなに近くにいるのは、海ぐらいしかいなかった。

「違うよ…っ、多分」
「あほだな」
「っ!速水に言われたくないっ」

速水を思いきり突き飛ばし、私は速水から離れる。

とにかく、この心臓の音と真っ赤になった顏を速水に見られたくなかった。