「なに勝手に抜け出してんだ…!…っ、平野海…!」

速水は海を見て、表情を険しくさせた。
海も速水の事を覚えていたらしく、表情を険しくさせる。

「よ、久しぶりだな」
「お前、京斉に通ったんだな」
「そーだよ、またお前と試合するのが楽しみだぜ」
「俺は全然楽しみじゃねーけどな」

バチバチと火花が飛んでいそうな雰囲気のなか、京斉のマネージャーの女の子は一人おろおろしだす。

「二人とも、やめよ」

私は二人の間に入って止める。
海と速水は、お互い視線をずっと離さなかった。

「速水、お前はー」

海がそう言いかけた時だった。
遠くで栗田先輩達が呼んでる声がする。

「速水、先輩達呼んでる」

速水の裾を引っ張り、先輩達の所に行くように見つめる。

「わかったよ、先輩達にしばかれるのメンドイしな」
速水は頭を掻いてくるりと海に背中を向ける。
「おい、空!」


海が私を呼ぶ。私は振り返り、告げる。

「海、もう、あの約束はなかった事にしよ?だから、もう、自分を追い詰めるのはやめて」

静かに告げて、私は速水と一緒に先輩達の所に行く。

その時、私は海の顔をまともに見れなかった。