練習試合は、凛海高校の勝利で終り、相手高校と一緒に試合会場のモップ掛けをする。

客席に視線を向けると、海達が帰ろうとしていた。

「っ…、海…!」
私は片付けていたドリンクを置き、急いで海の後を追う。

「海!」

会場を出ると、目の前に海の姿があった。
海の名前を呼ぶと、海が振り返る。

「空」

数年前より、少し低くなった声で、私の名前を呼ぶ。

「久しぶり…!」
「だな、なんか、変わったな」
「海も大分変わったね」

そんな会話をして、二人で笑う。

「平野、俺達先に帰ってるぞ」

海の先輩らしい人が、海にそう声をかける。
「え、いや、別にそんな海と話す事は…」
「すいません、先輩。後で行きます」
海は先輩にそう告げると、先輩達は「あ、お前は保護者な」と言って女の子を一人置いて歩き出す。

「ちょ、海…!」
「いや、俺も空と話したいことあるし」

平然とそう言う海に、私の顔はどんどん熱くなる。
「あ、私の事は気にしないでー。話が終わったら、こいつは責任持って寮に連れて帰るから」
助けを求めて、マネージャーらしい女の子に視線を送ると、その子はにこにこした笑顔でそう言う。

変に緊張して、顔が熱くなるのを感じて今すぐに海から離れたかった。
海は、昔のように私の肩に手を置く。

「空?」
顔を覗きこみ、首を傾げる海。

そんななか。

「寺山!お前、人に掃除サボるなって言ってるくせに、なんでお前がサボってんだよ!」
大声で文句を言いながら現れたのは、速水だった。