空side


「海…?」

大声がした方を見ると、そこには見慣れた人物がいた。

なんで…。

「平野…?あいつ、京斉に行ってたのか…」

速水も、海に気づいたようだった。
海はじっとこちらを見つめ、視線を外さない。

「…っ」
どうしよう。
心臓がドキドキと鳴ってうるさい。

「寺山、大丈夫か?」
「え?」
「なんか、震えてたからよ…」
「え、ホントに?あはは…、武者震いかな?」
「お前は試合出ねぇだろ、バカ」
頭を軽く叩かれ、ちょうど整列の笛が鳴る。
「出てるよ、裏の試合にね」
「んじゃ、しっかり裏から俺をサポートしろ」
「上からムカつく」

整列に向かおうとする速水の背中をグーで殴る。
速水は少しよろめき、「馬鹿力」と小声で言ったのを私は聞き逃さず、再びグーパンチをお見舞いした。
速水は痛そうに背中をさすりながら、私を睨み、整列する。


私は笑顔でコートに入る速水達を見届ける。




気づけば、原因不明の震えは止まっていた。