庭が見える部屋へ通されて
3人掛けのソファーに座るよう促された
大人しく座っていると
カラフルなマカロンと淹れたてのコーヒーが運ばれてくる

「少しお休みになられたら、お家まで送らせていただきます」

ゼルはそう言ってくれたけど
まだなんの役に立った気がしない

「こんな話、信じて来てくれただけで十分ですよ」

何かを察したのか優しく笑いかけてくれるゼル
レイも少し微笑んで返した


「あーれー?女の子だー。めずらしー」

ゆっくりとした話し方
声の方に顔を向けると
大きな瞳と目があった

「リーゼ様、先日話したレイさんです。」

リーゼと呼ばれた男は
子犬のように駆け寄ってきた

「へー、レイちゃん!美人さーん!」

ソファーのへりに肘をついて
脇からレイの顔をまじまじと見つめる

大きな目
柔らかそうな髪
可愛らしいその男性はどこかクライブに似ている気がした

「れーいちゃーん」

楽しそうに名前を呼んだと思ったら
すぐにレイの横へ座った
どこか犬のような彼はニコニコと人懐っこい笑顔をしている

「三男のリーゼ様です。この方も兄々とおなじ、です」

要注意人物とゆう単語だけ使わないゼルを見たら
明らかに呆れた表情をしていた

「えー、クライブとレオンともう会ったのー?俺が一番がよかったのにー」

顔をぐっと近づけられて
すこし緊張する
甘ったるい話し方に上目遣いがすごく可愛くて
レイの心拍数をあげていく


呼吸がかかりそうなほど近くにいたかと思ったら
もう飽きたのか
マカロンを指先で拾い、口に運ぶ

レイは緊張で動けないまま
横目でそれを見ていた

マカロンを頬張った口元にクリームが付いているのもお構いなしで
もうひとつ口に運ぶ

横目で見ていたら急に目があって
リーゼは満面の笑みを浮かべてみせた

「レイちゃんクリームとってー!」

またレイに顔を寄せると
レイは驚いて視線を外した

でもリーゼに顔を無理に向かせられる
キスをするのではないかと思わせるほど近かった


音もなく
急に横から手が伸びてきて
その手に持たれたハンカチでリーゼの口元に付いたクリームが拭われた

「レイさんが困っていますよ」

ゼルはハンカチをたたみ直しながら言う
クリームを拭ったのはゼルだとその時気付いた

「もー。ちょっとからかっただけじゃん。ゼル邪魔しないでー」

べーっと舌を出して反抗するものの
ゼルは涼しい顔をして無視をした


ーリンリンッ


聞き間違いかと思うほど遠くで
また、あの音がした気がした