手の甲や顎に
まだ熱がおびたまま
レイはリンリンの中を散歩していた
花が咲かない原因はまだわからない
正直、わかる気もしない
「日が暮れて冷えてきます。そろそろ中へ入りましょう。暖かい飲み物を用意します。」
手招きするゼルの方へ行くと、シャワーホースから緩く水が出て
土で汚れたレイの足を洗ってくれる
「せっかく洗った足、地面に着いたら汚れてしまいます。そこに座ってください」
用意されていたイスに座ると
ゼルが丁寧に足を流してくれた
「…んっ…」
指の間まで丁寧にゼルの綺麗な指が這っていく
くすぐったいような感覚が走って
つい口から息が漏れてしまった
一瞬こちらを見たゼルと目が合い、恥ずかしくなって視線をそらす
ゼルが一瞬、少し笑っていた気がした
10本の指が丁寧に洗われていく
指が別の生き物みたいにレイの足をなぞり、水で冷えた足に
ゼルの暖かな指は存在感を増していった
洗い終わって水が止まったときには
足から力が抜けていた
指の次は上質な柔らかいタオルが肌を撫でる
「…あッ…ゼル…さんッ…」
くすぐるように柔らかく撫でる拭き方に
また息が漏れた
こちらを見上げたゼルは
今度こそイタズラに笑っていた
「はい、いいですよ」
いつの間にか靴まで履かせてくれて
力の入らない足で立ち上がった
「…あなたは危険な人だ。男をおかしくする何かがあるようですね。イタズラが過ぎたようで…失礼しました」
謝っているけど顔は至極楽しそうだった
ーリンリンッ
遠くからまたあの音が聞こえた気がした
差し出されたゼルの手を軽く握る
そして屋敷の中へ入って行った
