「ますます〇の恩返し……ムタ役……」

バシッ!

「いってー!!!!!」

黒猫は持っていた杖で僕のふくらはぎを思いっきり叩いた。

死ぬほど痛かった。

「ムタは白い猫であろう!吾輩は黒だ!黒猫だ!皆が恐るる黒猫であるぞ!」

しゃがみこんだ僕に向けて杖の先を向けながら反論している。

「てか……なんで入ってきてんだよ……どこから入った……」

「あぁ、それは網戸を破らせていただいた、まったく、人間どもはわかっておらぬな。虫が入ってこれなくとも猫は破って入れるのだ。ま、猫の方が上という事だな」

「お前、上から目線なんとかならないのか?」

「僕とか言ってる者に頭を下げる程落ちぶれてはおらぬぞよ。僕というのは格下の言う言葉だ。故にそなたは吾輩より断然劣るということ」

「はぁ……猫の世界のことは知らないよ、あ、そうだ!聞きたいことあるんだ!いいかな?」

僕は不思議に思っていたことを黒猫に聞いてみた。

「ふむ、迷信……。たしかに、人間はそのようなものをよく作るな。猫を殺せば三年祟る。猫を蹴るとその脚はリューマチにかかる。猫を殺すと17年間不幸になる。まぁ、吾輩たちにとっては良いのだがな」

「ちがうよ。あのー、ほら、黒猫が横切ると不幸になるってやつ」

「なるほど、だからなのか!皆が吾輩を見るやいなや、ヒソヒソと見ちゃっただとか、最悪ー、今日不幸だわー。などと口を揃えていっていたのは!!」

「その迷信に関しては知らなかったんだ……」

「知らぬ!吾輩は猫を粗末にする者、いじめる者、殺す者は許さぬ故な!そして、そのような迷信を信じるなかれ、吾輩たちは勘違いの中で生きておる」

「勘違い?」

「さよう。人間は吾輩たちを勘違いしておるのだよ、ましてや一部の人間は自分の住み場がなくなることを恐れ吾輩たち猫を殺してきた。いまもなお、それが続いている。」

「あ……保健所……」

「そこだけではない。外国では家を建てるとき猫を生きたまま土台に埋め込むとそこには幸せが来るという迷信で多くの猫が殺されてきた」