ラヴコリーダ

「コラ、待て…!」

それを阻止しようと部長が身を乗り出して、上川さんに握られているわたしの手をつかんだ。

バシャッ!

ウーロン茶が部長の頭にかかった。

「あっ…」

わたしと上川さんの声がそろった。

あ、でも…ウーロン茶だから大丈夫かも知れない。

「上川」

部長の低い声が言った。

濡れた黒髪をかきあげて、鋭い目で上川さんを見据えた。

「お前、人のモノに手を出して何をしようとしてたんだ?」

目と同じ部長の鋭い声に、それまで騒がしかったその場がシン…と水を打ったかのように静まり返った。