その噂が本当ならば、もうとっくに自分の片想いは終わりを告げているだろう。俺はイライラしながらも、音出しをして合奏に備えた。

「千葉くんって吹奏楽部だっけ?」

1か月前、たまたまタイトルに引かれて手に取った本は、その日、谷川先生が表紙を見せる形にディスプレイしたばかりの本だった。

ある意味、谷川先生のおすすめ、というわけだ。

「それ、私も読みたい!」

『絶対音感』というタイトルに、千佳も興味を持って、俺のあとに借りていた。噂はたぶん、そのあとに本の感想やらを話しているうちに、二人の距離が縮まって…とかだろう。

要は確率の問題なんじゃないのか?

すでに親い仲とか、それがきっかけでどちらかが勇気を出したとか。

まあ、俺は…勇気を出す以前に、絶望的に距離が近すぎるのかもしれない。