「2年生の間での話だけど、若い方の先生に本を選んでもらうと、近いうちに恋が実るんだってさ。」

きゃいきゃいしながら盛り上がる女子を前に、俺は返す言葉がなかった。

恋が実る、ね。

「今度行くとき誘ってよ。」
「図書室ぐらい、一人でも行けるだろうが。」
「つまんないの。裕作のケチ。」

ケチでもなんでも、言えばいい。分かっているんだろう…

「おーい、合奏始めるぞー!」

そう言いながら、顧問の金沢先生が入ってきた。

なあ、分かっているんだろう。
去年の夏、きちんとは言わなかった…いや、言えなかった心の内を。