「なんかさ…」

譜読みがあっさり終わり、譜面をじっと見た市川が、ぼそっと話し始めた。

「地味だけど、猛烈に難しい予感がする。」
「え?」
「合奏が怖いっすよ。」

一個下だけれど、技術もそれなりにある後輩が、珍しく弱気になっていた。ぶーたれていながらも、なにかが気になった馬場が、スマホをいじくりながら、 眉間にシワを寄せていた。

「部長、スマホを練習中にいじるな、バカ!」

ギロッと俺をにらんだ馬場が、画面を突きつけてきた。

「なんでこんなん、選曲すっかなー。」