「先輩は、この部屋に来て、そこ座って、ぐだぐだするぐらいだから知らないでしょうが。」

すっと指差した先の教室が、他は暗いのに一部屋だけ煌々と明るい。

そして、部屋の並びから気がついた。

「ここから図書室見えるんですよね。この時間、大野先生はいない。」

だけど、今行けば確実に迷惑だ。金曜日に残業ってだけで、気が滅入るだろうし、帰ろうとしてたりしたのに俺が行けば、また帰る時間が遅くなるって、がっかり気まずい空気になるだろう。

「聞けばいいのに。」
「はあ?」
「嫌われるならガッツリ嫌われたら、諦められるんじゃないですか。」

うまく言葉がでなかったが、なにかよく分からないスイッチが押された気がした。

空になった紙コップをぎゅっとつぶして、ゴミ箱に投げた。

「悪い、コーヒー、ありがとな。」

気がつけば、図書室までダッシュしていた。こんな時間に、明らかに部活終わりの状態で、おかしいように思われるだろう。

だけど、そんなことは、どうでもよかった。

もう、嫌われたっていい。いっそ嫌われたら、すっぱり諦められる。

彼女に、谷川ほのかに、触れてみたい。

一日中、そんなことばかり考えていた。