「言っている、けど、あの状態、ってだけだ。」

振り向いた先生は、真っ直ぐに俺をみて、言葉を続けた。

「そこは変わんねーよな。押しが弱すぎ。」
「うっせーよ。」
「押せばいいのに。」
「無理。」

どこがいいんだろうな、こんなやつ。

「ま、人を思いやるのがお前のいいとこでもあり、弱点。思いの強さだったり、一途さや真っ直ぐさが、春日のいいとこであり、弱点だからな。」

カラカラ笑いながら、早く帰れよと言って、金沢先生は職員室に戻っていった。

ため息、すらでない。

今年が終わったら、接点がまたひとつ消える。だから、金沢先生の存在が小さくなれば、なんて身勝手な思いが、どうにも頭から離れない。