遠くで、着信音が響いた。

「もしもし。」
「片付いた?」
「うん。」
「そっか。」

タクミの声が、涙腺をゆるませた。

「タクミ。」
「ん?」
「ごめん。」

鼻をすすりながら、ぐすぐずな言葉が出た。

「謝るなって、何回言ったら分かるんだよ。」

笑いながら、タクミが答えた。

「いつでも、背中を押すから、無理するなよ。」
「ありがとう。」
「でも…」
「なに?」

少し間をおいて、タクミが答えた。

「もったいないって思わせたい。」

負けず嫌いのタクミらしい言葉に、なんだかほっとした。