そのガンコ親父も二年前、一人暮らしには広すぎるこの古ぼけた木造建築の家を残して、
この世を去った。


長年の激務と深酒が祟ったのだろう。

72歳。いささか早すぎる幕切れだった。



「澄人、負けるな」



親父はそう呟くと、寝室で静かに息を引き取った。

穏やかでありながら、どこかしら決然とした最期だった。