俺は大学卒業後も数々の新人賞に応募したが、どれも一次審査すら通らず、不遇の数年間を過ごしていた。


――自分にはやはり才能がないのか……。


半ば諦めかけていた時、その電話はかかってきた。



「おめでとうございます」



コンクールを主催する出版社からの朗報だった。
タイムトラベル小説『霧のトライアングル』が見事大賞を受賞したという知らせだった。


それからと言うもの、俺の生活は一変した。


対外交渉はダミーの龍神に任せ、ひたすら家にこもって原稿を書き続けた。



今でも光山龍神の小説は飛ぶように売れている。


印税収入はヤツと折半していた。


生活には困らない。


ただ、あのバカが調子に乗ってやたら仕事を引き受けてくるおかげで、
こちらは慢性的な睡眠不足に悩まされていた。



――クリスマスも正月も関係なく原稿を書いてるのはこの俺なんだよ!