今しがた母の墓標に手を合わせてきた俺は断崖の上に立つと、波頭きらめく海原を見つめた。

心地よい春風が頬を撫でる。


シスター・オードリーは今、海を見おろすこの高台の墓地に眠っていた。


日本霊園では屹立した墓石がほとんどだ。

まるで故人が未だ健在で、周囲ににらみを利かせているかのように。


しかし、教会の運営するこの墓地は違った。


死者は安らかに眠らせてあげねばと配慮したかのように、そこかしこに白亜の墓碑が静かに横たわっている。


そのせいか園内は見晴らしが良く、開放的で明るい印象だ。