老神父が目を剥いた。



「あなた、澄人君か!?」



その言葉は彼女が俺の母親であることを裏付けるに充分だった。



「早く母に会わせてください!」



その時、老神父の顔に刻まれた皺が、さらに深く陰影を刻んだ。



「どうしたんですか? 神父さん」



「そんなに会いたいのかね、お母さんに」



「あたりまえじゃないですか! 私は28年間、母を誤解したまま生きてきたんです。もう会えるチャンスはないと思ってました。私は母に謝って、許しを請いたいんです!」


「無理なんですよ」


神父は消え入るような声で答えた。


「え? 無理ってどういうことですか?」



「だから、お母さんに会うのは無理と言っているんです」



俺は逆上した。

――禅問答なら坊さんに任せておけ!



「な、何言ってるんですか! 聖職についた女性は息子に会っては行けないなどというルールがあるわけじゃないでしょ!」



俺はさらに言い募ろうとしたが、神父のバリトンが静かに遮った。



「今日のお昼過ぎ、シスター・オードリーは天に召されました」