俺は立ち上がり、一礼した。



「信者でない私にも神父さんのお説教、身に沁みました」



「どんな宗教でも根っ子は一緒です。そう見当違いは申しません」


神父は優しく微笑んだ。



挨拶はここまでだ。

宗教談義に花を咲かせている心の余裕はなかった。



「神父さん!」



静寂に包まれた礼拝堂に俺の声が反響した。


何か切迫したものを感じたのだろう。

神父の顔がやおら引き締まった。



「どうしたんです?」



「桐生芳江に会わせてください!」



「きりゅう?」



神父は首をかしげた。