☲ミラーが笑った◎

「本当に居たのよ。ここの神様だったのよ。ちょっと変わった神様だったけどね」

優はうふふっと笑いながら言った。

二人はカーブミラーの在ったところに立ち、あたりを見渡した。

「あの時から思うと、ずいぶん変わっちゃった」と優が言った。

「うん、にぎやかになった」

十字路にカーブミラーの姿は無く、そのかわりに発光ダイオードを使った最新式の信号機が設置されていた。

十字路の周辺にいくつも在った空き地には、いろいろな形をした新しい家が建ち並び、以前より人も車も多くなっていた。

信号機が青に変わり、それまで止まっていた車がエンジン音を轟かせて走り始めた。

「みんな新しくなってしまったから、ミラーボーも出てこられなくなってしまったのかも」

「そうかもしれないわね」

優が相づちをうったその時だった。


 あはははははは・・・・・・。


「あれ?あの声は!」

「ミラーボーが笑ったのよ」

二人は無意識のうちに手を取り合って、空を見上げた。そして声をそろえて叫んだ。

「ミラーボー!」

しかし、もう二度とミラーボーの笑い声が聞こえることはなかった。

二人は手を取り合ったまま、行き交う人や車を見つめた。


西に傾いた太陽の光が、二人の影を坂の上にながーく焼き付けていた。


     (おわり)