ある日、小学校、中学校でもずっと一緒だった達也がひろみの腕をつかんで言った。

「おい、若草学園で文化祭があるって、おまえ知っていたか?」

「文化祭?」

「そう、白百合祭っていうんだと」

「知らなかった・・・」

「バンド演奏もあるんだと。おもしろそうだぜ、行ってみるか?」

「うーん、考えておくよ」

「おまえ、ほんとうに冷めたやつだな。まあいいや、考えておけよ」

達也はそう言い終えると、体育館の方に走って行った。

ひろみも着替えのために教室に戻ろうとして、職員室の前の廊下に出たときだった。

掲示板に張られた一枚のポスターに目が行った。若草学園の文化祭のポスターだった。

ひろみはそのポスターのデザインがちょっと気になった。コンピュータ・グラフィックスで作られていることは容易にわかる。

着替えをして体育館に入ったところで、達也がまた聞いてきた。

「おい、ひろみ。行くか?」

行こうか行くまいか、まだ迷っていたひろみだったが、

「うん。一緒に行こう」

と、即座に返事をした。

達也の誘いを断る理由が無かったこともあるが、それよりも、あのポスターがなんとなく気になったからだ。